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【インタビュー】「事業の魂が削られない橋渡しを」両利き思考でビジネスとシステムを繋ぐ

今回は電通コンサルティングでマネジャーを務める秋枝 克実へのインタビューとして、新人アナリストがお話を伺いました。

※インタビュー内容、所属、役職は取材当時のものです。(2022年7月取材)


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目次[非表示]

  1. 1.電子カルテ国内最大手企業でパッケージの導入、開発を経験
  2. 2.プロダクト開発からITコンサルタントへの転身
  3. 3.ゼロからマーケティングをキャッチアップ。そして戦略コンサルタントへ
  4. 4.「右脳×左脳」の両利き思考という強み
  5. 5.「ビジネスサイドと開発サイドの橋渡し」というソリューション
  6. 6.SOEのシステム開発には「魂」が重要
  7. 7.橋渡しで「考える材料が揃わない」を解消して、強い意志でビジネスをつくる


電子カルテ国内最大手企業でパッケージの導入、開発を経験


―――これまでの経歴を教えて頂けますか?


秋枝:私は大学時代から、紙のカルテの代わりにPCに情報を打ち込んで情報共有をする電子カルテに興味があって、日本で一番電子カルテの導入シェアが高いメーカーの子会社に新卒で入社しました。

もともと大学ではソフトウェア工学をやっていたのでシステム開発に興味があり、開発の現場を経験したいと考えていました。ただ、周りに医療関係者はいなかったため、病院職員の方の職種や業務内容を理解していませんでした。

電子カルテを開発するためには先ずは病院の様々な業務を理解することからだと思い、業務知識を得たのち開発に携われるかどうかを軸に就職先を探しました。

その結果としてメーカー本社自体は電子カルテの導入まではせず、子会社やアライアンスが販売するという座組を理解した上で、グループ企業の中で現場の導入実績が多く全国に支社がある会社に入社しました。そこでは電子カルテの導入など約4年経験しました。病院の様々な業務をヒアリングし、現状の業務を改善するための1つの手段として電子カルテを利用し、最大限の効果をえるための業務設計をしていました。

電子カルテを使うと紙で渡す必要がないので、スムーズな情報連携や待ち時間が減る、ただ紙とセットで動かしていた薬や検査キットなどは誰がどうやって運ぶか。このような整理をしていたので次第に病院の業務がわかるようになり、現場の医師とも話せるようになった。

そのような経験を通じて得た業務知識を基に、当初にも増して電子カルテの開発をやりたいと思うようになりました。パッケージを導入していると、できると良いが仕様にない機能に気づくことがあったからです。そして開発をやりたいと上司に相談し続けたところ、グループ本社に出向するチャンスを上司が用意してくれ、電子カルテの開発元であるグループ本社に出向させてもらいました。


―――グループ本社ではどのようなことをしていましたか?


秋枝:そこから3年程電子カルテの開発に携わりました。開発の一環でプログラミングやデータベースのチューニングなどもしていましたが、主に大学病院や大規模病院の先生とどのようなシステムがいいかを対話して、こういうシステムで動かしたいという要望を言葉にして要件定義書を書いていました。

要件定義書を基に設計や実装・テストは中国でのオフショア開発や九州のグループ会社によるニアショア開発で主に実施していました。私は仕様通りにできているか確認し、開発したシステムを実際に先生に使ってもらい評価いただき、全国向けの電子カルテシステムに組み込むことをやっていました。


プロダクト開発からITコンサルタントへの転身

秋枝:ただ、グループ本社への出向から、子会社へと戻らなければならない時期がきて、今後のキャリアを考えるようになりました。そのとき「医療業界に特化した経験だけじゃなく、キャリアチェンジしまったく別の業界・業種を今のうちに経験することもしてみたい」という想いから総合系コンサルティングファームに転職しました。そこでは官公庁系のプロジェクトを担当する部署に配属され、ITコンサルタントのようなことをしていました。

ファースト・ジョブはファーム内でも特に大変と言われていたプロジェクトで、丸1年同じプロジェクトを経験したのですが、2年目で同じファームで一緒に働いていた方が電通デジタルに転職して、私を呼んでくれました。私自身はマーケティングに関する仕事はほとんど経験がなく、もともとIT畑でシステム開発や業務設計はやっていたものの、マーケティングの「マ」の字も知らない状態でした。

どこかでキャリアチェンジしたいと思っていた時に、ちょうど電通デジタルの方から声をかけて頂いたので、またとないチャンスだと思い2018年に電通デジタルに転職しました。新卒入社が2010年なので約8年くらいIT畑にいて、マーケティングの会社に移りました。


ゼロからマーケティングをキャッチアップ。そして戦略コンサルタントへ

秋枝:電通デジタルに入ったものの、マーケティングのことは知らないので、MBAのマーケティングの本など様々な本を読んで勉強しましたね。電通デジタルではITのバックグラウンドを活かしてCDP(※)やマーケティング基盤システムの構築をメインでやっていました。業務ではプランナーやクリエイティブの人と話しながら楽しく働いていました。

3年程経った頃、自分のキャリアを見直そうと思って他のコンサルファームを見るようになりました。その時同じ部門でライン上にいた上司に「会社を辞めようと思います」と相談したら、電通コンサルティングという会社があることを教えてもらったんです。

話を聞くとユニークな特徴があり面白そうで、他のコンサルファームに行く前に電通コンサルティングで経験を積もうと思い、電通コンサルティングに入社しました。

(※)CDP(Customer Data Platform)…顧客一人ひとりの属性データや行動データを収集・統合・分析するデータプラットフォーム


「右脳×左脳」の両利き思考という強み

秋枝:私はピュアなストラテジーコンサルではなくITコンサル寄りの人間です。

電通コンサルティングが掲げる「右脳」「左脳」でいうと、「右脳(クリエイティブな思考)」の人間ではないです。でもピュアなストラテジーコンサルの人に比べるとそこまで「左脳(論理的な思考)」ではないので、「中脳」というかどっちつかず。

良く言うと「右脳と左脳を繋ぐことができる人材」というのがポイントかなと思っています。


「ビジネスサイドと開発サイドの橋渡し」というソリューション

	「ビジネスサイドと開発サイドの橋渡し」というソリューション


―――秋枝さんは「ファシリテート型によるDX戦略の実現」というソリューションを考案していますね。どのようなソリューションなのでしょうか?


秋枝:どの企業・プロジェクトにも当てはまるソリューションになっています。DCIが提唱する課題探索~実装の流れで言うと、ビジネスサイドでやりたいことや想いを構想しても、現実的にできることやシステム上の制限に阻まれ、構想段階で描く実現したいサービスと実装段階で描く実現できるサービスにはギャップが生じてしまいます。

生じるギャップの中でも特にサービスの根幹となる部分については、ギャップを埋めるためにはビジネスサイドで考えた要望を、開発できる状態に落とし込む必要があります。ただ、自分たちの想いを完全にドキュメント化するのは難しく、システム側は言われたことしかわからないのでやりたいこと・想いを充分に引き継ぐことができないという課題があります。

ここの橋渡しをするには、ビジネスサイドがやりたいことに対し、複数のプランを提示して、どれがいいかを対話していくという進め方が効果的です。決められたスケジュール、予算の中で、やりたいことに対して優先順位をつける必要がありますが、この優先順位を当事者同士で話すのは難しいので、間に入ってファシリテーションする第三者の存在が助けになります。ビジネスと開発のコミュニケーションがとれていると、組織としてもローンチ後の改善プロセスが回っていくような体制になります。

コミュニケーションがとれていないと分断されて、作ったら作りっぱなしになりPDCAが回らない。「仏作って魂入れず」のような状態になります。プロダクトは作ったが、ビジネスの中核にあるべき「やりたいこと」「ハート」がなくなって、結局使われずに終わってしまうことになってしまいます。これはどの企業にもある根深い問題で、特にナショナルクライアントのような大きな企業では、組織が分かれて互いのミッションが相いれないことが往々にしてあります。
秋:そこで、私たちが橋渡し役となって、ビジネスサイドの魂が削られないようにシステム側に伝えていくためのソリューションになっています。


SOEのシステム開発には「魂」が重要


―――その課題意識は、電子カルテを開発していた頃から感じていましたか?


秋枝:開発をしていたころから感じていましたね。企画から要件定義に移るタイミングでも最初の想いは削られてしまうんです。システムとして白黒はっきりさせなければいけない世界に持ち込もうとすると如実に削られてしまう。予算・期間・技術的なリスクを考慮すると、古く・確実にできる手法しか開発サイドはとりたがりません。SOR(System of Record)と呼ばれる業務システムならそれでもいいのですが、SOE(System of Engagement)と言われるエンゲージメントや顧客接点を担うシステムだと、顧客との繋がりをどうしたいかの「魂」が重要になります。そのようなデジタルサービス開発では、電通コンサルティングのソリューションが非常に効果的です。


橋渡しで「考える材料が揃わない」を解消して、強い意志でビジネスをつくる


―――橋渡しをする中で一番難しいポイントはどのようなところですか?


秋枝:難しいのは、クライアント自身の想いが弱いときですね。「なんでもいい」という姿勢だと中途半端になりがちで、意志が反映されず、開発して良かったか評価もできません。意志をもって要望をあげてもらわないと魂が入らないんです。

なぜ「なんでもいい」となってしまうかというと、ビジネス側で「何ができるかわからないから、お任せしたい」という思考になってしまうことが多いです。開発側としてはどうして欲しいのかわからないですよね。どういうポイントがあって、どういう判断軸があるのかを提示して、選択肢の中から選んでもらうといったファシリテーションをする必要があります。「考える材料が揃わず考えられない」というところをどう解消してあげるかが重要です。


―――橋渡しをした結果、お客様からどのような声を頂きますか?


秋枝:マーケティング領域は広く、1つのプロジェクトの中で色々なマーケティングシステムに関わります。中期経営計画やリリースのタイミングなどが絡み、物事が順番に進んでいく中で、ある領域での支援が完了したあとに、隣接領域についてもお願いできないかとお声を頂くことが多いですね。


―――ありがとうございました。後編ではシステム開発からマーケティング領域に転身した時の苦労や学び、そしてマネジャーとしての想いについてお聞きしていきます。


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●今回インタビューした方

秋枝 克実
電通コンサルティング マネジャー

秋枝克実_プロフィール

大学院情報学研究科修士課程修了。
システムインテグレーターに入社し、システムの企画から構築まで一連の開発業務と、新業務の設計や業務プロセス改革などコンサルティングに従事した後、グローバルコンサルティングファームで主に業務の設計・定着化を担当。その後、電通デジタルでマーケティング領域の企画・構想、実行支援に従事し、2022年から現職。
企画・構想を実現するためにステークホルダーを巻き込み、デジタルサービスの開発工程まで踏み込んだ支援が強み。


秋枝のプロフィールについて詳しくはこちら >>