「常に根底にある『なんとかしよう』という想い」ビジネスコンサルティングの両雄が語るマインドセット【電通総研×電通コンサルティング】
今回は、新たに再編された電通総研でコンサルティング本部 戦略コンサルティング第2ユニット長を務める白戸 大輔氏と、電通コンサルティングで執行役員 パートナーを務める魚住 高志による対談の内容をお届けします。国内電通グループ(dentsu Japan)のBX・DX(ビジネストランスフォーメーション・デジタルトランスフォーメーション)の一翼を担う両者が、ビジネスを実現していくために必要なマインドについて語っています。
(ファシリテーター:電通コンサルティング 執行役員 パートナー 田中 寛)
※インタビュー内容、所属、役職は取材当時のものです。(2024年2月取材)
目次[非表示]
dentsu JapanのBX・DXを担う両者の経歴
システム、マーケティングからビジネスコンサルティングへ
田中:お二方の経歴についてお聞かせください。
白戸:私はメーカーのシステムエンジニア、コンサルティングファームを経て電通国際情報サービス(ISID、現:電通総研)へ入社しました。金融業界向けにインターネットバンキングの仕組みを導入した他、メーカーのウェブサイト制作や、フレームワーク・ミドルウェアといったレイヤーの案件を経験した後、ISIDのR&D部門へ移りました。
そこでは、さまざまなノウハウを他の事業部に横展開するといったことを行っていました。その折、私が執筆をした雑誌記事を見ていた方から、ビジネスコンサルティングの部署を立ち上げるとのことで声がかかりました。当時はクラウドサービスが台頭してきた時期で、クラウド関連のソリューションを横展開するためのグランドデザイン等を担当していました。
2013年前後にコンサルティング部隊やISIDビジネスコンサルティング(ISIDBC、現:電通総研)ができる頃までは、技術開発の分野で経験を積んでいたので、それが私のベースになっています。
魚住:私は新卒で電通に入社し、一貫してマーケティング、デジタル戦略に携わってきました。2013年頃は事業開発やR&Dをしていましたね。
一般的なSIerとは異なる電通総研
電通総研 コンサルティング本部 戦略コンサルティング第2ユニット長 白戸 大輔
一人ひとりが活躍できる環境づくりで、SIerのイメージから脱却
魚住:私、実は新卒採用でISID(現:電通総研)の面接を受けていて、今でも採用面談のときに担当の方が丁寧に接してくれた記憶が思い出されます。電通総研はISIDの時代から特に従業員のエンゲージメント(※1)向上に力を入れていますよね。
(※1)エンゲージメント…従業員エンゲージメント。個々の従業員がもつ所属企業に対する理解や共感、自発的な貢献意欲を指す。
白戸:はい、働き方改革が叫ばれる前から、性別や年齢、ライフステージに関わらず「一人ひとりが活躍する職場づくり」に注力しています。一昔前は、SIerにはどうしても残業が多いイメージがありましたが、その頃から環境改善に向けた対策を講じていました。
たとえばPCログから申請時間と実際の稼働時間の差を細かく分析して残業時間を正確に捕捉したり、従業員代表が役員への改善要望を提示して議論したりするなど、きちんと「実態のある」対策を取ってきました。
また、従業員が業務のゴール設定をする際には、「Will」を必ず聞き、担当する案件が「Can」に偏りすぎないように工夫しています。明確な「Will」を持っている人が多いので、それが組織の起爆剤になっているように感じています。
結果としてエンゲージメントに関する指標も大幅に向上し、働いていて活気や勢いを感じる職場になっています。
田中:従業員と真摯に向き合う姿勢によって活気ある職場にできているのですね。
相手の意図を深いレベルで汲み取るコミュニケーションで憧れや賛辞を受けることも
魚住:電通総研の社員はコミュニケーションにも優れていますよね。電通総研は、dentsu Japanの血を通わせながらコンサルティングをうまく融合させる新しいコンサルティング手法を早い段階から作っていたので、人気のある会社という印象です。
白戸:そうですね。電通総研の社員が持つコミュニケーション能力は他社のSIerと比べて異質だと思います。よく、「システム関連会社」というと、パソコンに向き合う時間が長い印象が強く、それに伴い、コミュニケーションが苦手な印象を持たれることも多いですよね。でも、電通総研は、コミュニケーション能力に優れた技術者が多いことから、お客様等からコミュニケーションの取りやすさに関してお褒めいただけることもよくありました。
自社の利益だけでなく、連携パートナーの利益も追求する
電通コンサルティング 執行役員 パートナー 魚住 高志
dentsu Japan内で連携する際の心得
田中:dentsu Japan内で連携をはかる際に大切にされていることはありますか。
白戸:dentsu Japanの社員と働くときによく感じるのは、「このクライアントとこうやりたい」といった意志がある方とは働きやすいですよね。
魚住さんは明確な意志を持っているので、一緒にいると「自分はこう思う、私はこう思う」みたいな議論が盛り上がりやすいです。
魚住:そうですね、組織が異なる中でどのように協業できそうか、いつも考えています。
白戸:dentsu Japanの中でのコンサルティングファームという特殊な立ち位置をどのように伝えるか、AX(アドバタイジングトランスフォーメーション)だけでなくBX、DX領域も手掛けられることをどのように理解してもらうか、といったことを普段から議論していました。dentsu Japanの中でこのコンサルティングの機能をどう活用していくのかといった話が多いかもしれないですよね。
もちろん、どのような体制を組めるとdentsu Japanとしてシナジーを発揮できるような、次フェーズを見据えた提案ができるのかを話すこともありました。
魚住:そうですね。基本的にパートナーになったり、アライアンスを組んだりする際に、お客様へ価値提供の次にくるのは、「自社の利益」や「自社の強みの発揮」だったりします。
しかし、dentsu Japan内でお互いをよく知り、タッグを組めば、おのずと「相手の利益」や「相手の強みの発揮」を考えることができます。お客様へ提供できる価値の最大化に注力でき、その後も相互の利益を追求するスタンスでお互い会話できることが良さです。
自分も意識していますが、白戸さんもそのようなスタンスでいてくださるので、協業する前提での議論がしやすいです。
田中:お二方が同じスタンスを持っていらっしゃることもあって、最初から意気投合されたんですね。
電通総研×電通コンサルティングが組むことによる補完性
魚住:協業で言うと、電通総研と電通コンサルティングとでは、同じコンサルティングを手掛けているとはいえ、お互い持っていないものを持っているなと思っています。
白戸:そうですね。たとえば、電通コンサルティングがパーパスを描くような「構想・計画」から、電通総研がシステムやまちづくりができる「実行・計画」まで落とし込めると考えると協業のイメージが湧きますし、相談もしやすいです。
「こういう案件は電通コンサルティングならできますか?」といったコミュニケーションを日々しているからこそ、協業ができていると思います。
田中:どのようなときに魚住さんに相談しようと思いますか?
白戸:電通総研でできないところがあった際に、「電通コンサルティングならできる」と思うタイミングが多いです。奇しくもできる領域、できない領域は、かみ合っていると思います。
懐に入りこむコミュニケーション
田中:先ほどコミュニケーションについて興味深いお話がありましたが、心がけていることはありますか?
白戸:以前、ある電通の営業の方とお客様先に自主提案に行ったときのことです。野球が好きなお客様に対して野球をネタに会話を盛り上げるんです。特定のチームの熱狂的なファンじゃないとわからないような例えを使って提案を説明すると、お客様はかなり喜んでくれてその後の関係構築に繋がりました。
提案内容が優れていることはもちろん、クライアントの関心ごとに置き換えるような表現ができるのは、お客様のことをよく捉えられているからこそなのだろうと思いましたね。
この関係性の築き方は、今の電通総研の営業においても学ばなければいけないところだと思います。
田中:真似したくてもなかなかできないポイントですね。
魚住:コミュニケーションにおいて心がけていることと言えば、何かトラブルが起こったときに、真っ向から真面目に対応し、関係性がこじれてしまうケースがあると思います。トラブルが起こりそうという状況を瞬時に察知し、その場の流れを変えてうまく処理をする能力は重要ですよね。
さまざまなバックグラウンドの人材が、各々の思惑でその場に集まっているので、全員の最適解を常に探しながらこの場をまとめ上げる必要があるからこそ、そこに長けていることは強みになるのではと考えています。
田中:喋り方がうまいだけではなく、相手の想いや考えを敏感に感じ取り、汲み取りながら対応するなど、話す内容や話し方、タイミングを含めた全般的なコミュニケーション能力が求められるのですね。
常に根底にある『なんとかしよう』という想い
徹底する「逃げない」姿勢と、「“人” 対 “人”」として接するマインドセット
魚住:白戸さんを中心に電通総研の方は、「なんとかするまで逃げずに考え続ける」という姿勢を徹底していますよね。ここまで徹底できている人は少ないですよね。
白戸:逃げられなくて辛いこともありますけどね。「なんとかしなきゃ」という想いは常に根底にありますね。
魚住:電通総研は、ISIDの時代からよく一般的に言われるコンサルティングファームのイメージとは異なり、義理人情に厚い印象もあります。
白戸:そうですね、あるクライアントからは「泥水をすすってでもやってくれる」と言われたことがあって、褒められているのかわからないですよね(笑)
クライアントとの付き合い方という点では電通総研に変わっても大切にする部分だと思っています。
魚住:なんとかしてくれつつ、かつ、自社の利益や自社の強みの発揮だけでなく、相談相手や関係者の利益や強みの発揮も考慮して、お互いにメリットがあるストーリーを考えてくれますよね。
田中:魚住さんは特に「“人” 対 “人”」として接するマインドセットをお持ちで、社内外から相談しやすい立場にいらっしゃいますね。
魚住:自社だけでできることは限られていますからね。
白戸:同感です。結局、会社の規模に関わらず自分たちだけでできることは限られていて、お客様のニーズに必ずしもピッタリ合うわけでもないので、そこはdentsu Japanの力を活かしてやりたいなと思っていますね。
●今回インタビューした方
白戸 大輔
電通総研 コンサルティング本部 戦略コンサルティング第2ユニット長
専門領域はDX戦略、ITグランドデザインやITロードマップ、RFP作成などのIT戦略、情報セキュリティー戦略。これまで自動車のオンライン販売プロジェクト企画・推進支援や、流通・小売・金融業においてアジアマーケットにおける顧客獲得・クロスセル、顧客情報の利活用・実現推進などの多業種のDX構想策定支援などを手掛ける。 |
魚住 高志
電通コンサルティング 執行役員 パートナー
電通入社後、一貫してマーケティングのデジタル戦略策定支援に従事し、CRMサービス開発に関するプロジェクト経験が豊富。 また、ビッグデータとクラウドの可能性に早期から着目し、それらを活用したソリューション開発やコンサルティング、関連する記事執筆や講演も多数。 最近は、「マーケティングの経営ごと化」をイシューととらえ、企業ファイナンスとマーケティングの結節点となるテーマ開発に従事している。具体的には、顧客・従業員・社会と企業の「信頼」を非財務指標とした「企業価値」への貢献度を可視化。 更にはそれらをKPIとしたマーケティングPDCAの具体実行までを支援することで、経営者と実務者をつなぐ支援を行っている。 |