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「AIに置き換えられないdentsu Japanならではのコンサルティング」【電通総研×電通コンサルティング】

新たに再編された電通総研でコンサルティング本部 戦略コンサルティング第2ユニット長を務める白戸 大輔氏と、電通コンサルティングで執行役員 パートナーを務める魚住 高志の2名の対談です。今回はその後編として、AIに置き換えることができない「未来に向けたdentsu Japanならではのコンサルティング」の可能性について語っています。


(ファシリテーター:電通コンサルティング 執行役員 パートナー 田中 寛)

※インタビュー内容、所属、役職は取材当時のものです。(2024年2月取材)


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目次[非表示]

  1. 1.システムから社会実装まで。「電通総研」として再編した経緯
  2. 2.電通総研×電通コンサルティングで見据える今後の展望
  3. 3.徹底的にお客様の課題に対応して具体に落とし込み、世の中にインパクトを
  4. 4.「使う人の笑顔を思い浮かべながら」dentsu Japanらしいコンサルティング


システムから社会実装まで。「電通総研」として再編した経緯


SIerからビジネスコンサルティング&シンクタンクへのリブランディング


田中:今回電通総研が再編された背景を教えていただけますか?


白戸:まず、電通総研では長期経営ビジョン「Vision 2030」とそれに基づく売上目標を掲げています。それを実現していくためには、これまでの成長をより加速させる必要があります。

持続可能な社会の実現、カーボンニュートラル等、企業や社会を取り巻く環境や直面する課題はより多様化していく中で、お客様からご相談いただく内容も大きく変化していることを私自身、肌で感じていました。
 
こういった社会や企業の要請に的確に応えていくためには、これまでのケイパビリティでは不可能です。SIer(※1)だけでなく、社会への提言や調査を行うシンクタンク機能、戦略策定を支援するコンサルティング機能が必要との判断でした。
 
今回の再編ではコンサルティング事業を展開する電通総研の連結子会社2社(アイティアイディおよびISIDビジネスコンサルティング)を統合し、電通グループの日本事業を統括するdentsu Japan 内のシンクタンク「電通総研」の機能も移管しています。

(※1)SIer…システムインテグレーター。クライアントのシステム開発・運用に関する業務を請け負う企業。


電通総研再編による変化


田中:再編によりどのような変化があったのでしょうか。また、dentsu Japanでどのような役割を今後期待されていますか?


白戸:再編されたことによって、今までのコンサルティング案件では、システムに近い領域が多かったものの、今後はシステムだけではなく、経済圏をどうつくっていくのかといった社会実装にまで広げられるようになりました。

電通総研内のコンサルティング本部の位置付けや期待としては、システムで終わりではなく、どのように経済圏をつくり、街を盛り上げていくのか、という点で期待されています。


電通総研の「総研」業界での差別化


田中:「総研」と聞くとシンクタンク機能やコンサルティング機能、SIer的な機能を持つ組織等、多様ですが、業界内で「電通総研」にはどのような特長があるのでしょうか?


白戸:実は業界内の競合はあまり意識していないのですが、「電通」のブランドが入っていることで、dentsu Japanの強みをおのずと活用できていると思っています。


他のコンサルティングファームと比べて、お客様の相談内容も、「生活者」や「社会」の動向を意識したものが多い印象です。どちらかというとマーケティング寄りであったり、お客様の担当部門も会計部門や経理部門というよりは、経営層や経営企画部門であったり、異なるレイヤーからアプローチすることができている実感があります。自然と差別化ができていると感じているところです。


田中我々電通コンサルティングも「電通」のブランドを使用しているコンサルティングファームですが、他のコンサルティングファームとの違いを感じるところはありますか?


魚住:まず「電通ってコンサルティングしているんだ」と驚かれますね。一般的にはdentsu Japanがコンサルティングを手掛けているイメージはないようで、「電通」と「コンサルティング」という混ざりそうにないものが混ざっていることに驚かれることがあります。


当社は少数精鋭ですので、総合コンサルティングファームのように全ての領域を網羅することはできません。そのため「グロース領域」に特化していますが、事業成長やトップライン向上に資するコンサルティングを提供するときに、「電通」のブランドがあることで一定の説得力があると思いますね。


「電通」ブランドによる効果。再編による「電通総研」ブランドの活用へ


白戸:社名が電通総研に変わったことにより、意外なところで効果がありました。まず採用では、中途や新卒を含めなんと約500パーセントも応募が増えたんです。コンサルタントの数だけではなく質も上がっている印象です。これまで、強みとしていた製造業からの転職者が多かったのですが、同じコンサルティングファームからの転職も増えてきました。
 
また、初対面のお客様からの反応も変わり、「電通総研」と名乗ることでより温かく迎え入れていただけるような変化も感じています。私の娘でさえも、CMのおかげで「パパの会社のことを初めて知った」と言ってくれたり。何をしている企業なのかイメージしやすくなったようです。


田中:パパの会社が何の会社かお子さんにわかるというのはブランディング上、大事な話ですよね。


電通総研×電通コンサルティングで見据える今後の展望


1つの企業だけでなく、複数社や国を巻き込んだ仕掛けを


田中:これからの話もしましょうか。今後の展望として電通総研と電通コンサルティングの2社で組んでやりたいことや、構想されていることはありますか?


白戸:1社だけではなく、複数の企業の連合体や、国になるのかもしれないですが、我々だからこそできる大きな話を魚住さんと一緒にやっていけると面白いのではと思っています。たとえば自動車メーカー単体への支援だけではなく、OEM(※2)を含む自動車メーカー全体に対してプラットフォームを提供するといったことは、我々だからこそ手掛けられると思っています。

(※2)OEM…Original Equipment Manufacturerの略。他社ブランドの受託製造という一般的な意味とは別に、自動車業界では完成車メーカーを指すことが多い。


マーケティングとシステムを経営アジェンダに


魚住:dentsu Japanが手掛けるマーケティングや電通総研が手掛けているSI(※3)を経営ごと化していきたいと思っています。お客様の経営の上流でマーケティングやSIの持つ力をもっと認識してもらえるような、dentsu Japanの持つ一番大きなポーション(部分)を引き上げる活動をしていきたいですね。

(※3)SI…システムインテグレーション。システムの企画・要件定義・開発・導入・運用・保守までを一貫して行うサービス。

マーケティングやSIの予算は、経営アジェンダに上がりにくく、主要な活動として推進されていない企業が多いので、マーケティングやシステム・ITが持つ影響力がもっと理解され、上流で議論されるように引き上げていくことを我々がやっていかないといけませんよね。自社の売上を上げることだけで満足しているというのはスケールの小さい話だと思います。


徹底的にお客様の課題に対応して具体に落とし込み、世の中にインパクトを


画一的なソリューションに逃げずに、個々のお客様の課題を考え抜いて応えていく


田中:今後に向けた「dentsu Japanらしいコンサルティング」について、もう少し伺いたいと思います。どのような取り組みを大切にしていきたいですか?


白戸:今後に向けた取り組み方に通じる、お客様との事例が1つあります。あるお客様では、経営管理の高度化が課題になっており、たとえば4月に現場から数値報告が上がってきても、まとめるのに11月まで時間を要してしまうといった問題を抱えていました。ルールやシステム上の問題もある一方で、本質的に何を分析するべきかという視点での検討が全くできていませんでした。

このような課題に対して特定のソリューションに縛られてしまうと、それに合わせた施策を実施し効率化を試みているものの、お客様が本来やりたいことをよりブレイクダウンして進めることができていない状況があります。

電通総研としては、お客様が本来やりたいことに向かっていくコンサルティングの意義を見せる必要があると思っています。


電通コンサルティング 執行役員 パートナー 魚住 高志

電通コンサルティング 執行役員 パートナー 魚住 高志


田中:そもそも、そのお客様は何かしらの意思決定に役立てたいから、数値・情報をまとめて報告しているはずですよね。しかし、どのような意思決定に経営情報を使いたいのかという目的を深掘りせずに、7か月かかる情報のまとめを効率化することが目的になってしまうということですね。​​​​​


白戸はい、しっかりそこを理解した上で進めなければいけません。「他社がこうやっています」と言いながら提示するものは、個々のお客様向けに最適化されていないことがあります。

そのように、お客様を考えつくすことをやっていかなければならないと思っていますね。


「目に見える具体に落とし込み、世の中にインパクトのあるものを出す」


田中:魚住さんも普段「形にならないと嫌だ」とおっしゃいますよね。


魚住:dentsu Japanの持っているDNAが根底にある気がしますね。具体化して実際に物事が動いていくということに楽しみを感じるといいますか、何かしら世の中に具体的なインパクトを与えたいという想いがあります。


白戸:システムの話は、裏側でシステムを連携させるなど目に見えづらい部分が多いですが、最近はデータ連携等、徐々に目に見える形での実装を手掛けられるようになってきました。dentsu Japanには、あるべき姿に向け、具体的に目に見える実行プランまで落としこむという意志が強くあると思います。


「使う人の笑顔を思い浮かべながら」dentsu Japanらしいコンサルティング


表に出にくいシステムでも「使う人の笑顔」を浮かべながら構築する


魚住:BtoCサービスは表に出やすいので注目を集めやすいですよね。ですが私は、実は、表に出にくい自社従業員向けの業務システムを手掛けるのも好きです。

たとえば、社内向けの業務システムの導入で、「従業員の業務効率がこれだけ上がった」という話はもちろん大事ですが、「残業を減らすことで仕事が早く終わるようになり、プライベートに当てられる時間が増えて、いきいきと働けるようになった」というきっかけになることもあります。

世の中を動かすという大きな規模の話だけではなく、このように、企業単体の中で、従業員一人ひとりが素敵な人生を送るきっかけになるというのも、目に見えるような形で貢献ができている、ということであり、価値があると思うのです。


田中:業務システムを導入したことによって、たとえば会計上のコスト削減や、生産性何%アップという効果に価値を見出すのが一般的ですが、どちらかというとそこで働く人たちの勤務時間がこれだけ削減できて、その分幸せな時間に当てられるという「人の顔が浮かんでいる」考え方が特徴的ですね。

システムを使っている人がいて、その人たちがどのような生活を送っていて…ということを念頭にシステムを構築する、つまり「使う人の喜ぶ顔が見たい」という考え方が基本にあるのでしょうね。


魚住:そうですね、デジタル領域においてもdentsu Japanらしい発想や視点になっているのではないかと思います。


「喜ぶ顔を見るために」なんとかするまで考え続ける原動力

電通総研 コンサルティング本部 戦略コンサルティング第2ユニット長 白戸 大輔

電通総研 コンサルティング本部 戦略コンサルティング第2ユニット長 白戸 大輔


白戸:今までエンドユーザーと触れる機会がなかった製造業出身のコンサルタントが、初めて成果発表のプレゼンテーションをしたときにお客様に言われた「ありがとう」という感謝の言葉がいまだに嬉しいという話をしていました。

そのような経験がモチベーションになっている人が実は結構多いです。システムなどを構築し「ありがとう」「おめでとう」「終わりましたね」というときに、関係者の表情に笑顔が溢れるんですよね、その瞬間がやっぱり好きなんだと。


魚住一般的なコンサルティングファームは、最終的には自社の売上・利益を最優先のKPI(※4)にすることが多いです。

(※4)KPI…「Key Performance Indicator」の頭文字を取った言葉で、重要業績評価指標や重要達成度指標のこと。企業における最終目標到達までの、各プロセスの達成度や評価を示す指標。

きれいごとに聞こえるかもしれませんが、我々は「お客様やエンドユーザーの喜んでいる姿が見られる」というところに喜びを感じているという点は、他のコンサルティングファームより強いのではないかと思いますね。「なんとかするまで逃げずに考え続ける」というスタンスは、喜ぶ顔を見たいという想いからきているのです。だからなんとかするまで頑張れるのだと思います。

それは、dentsu JapanがマーケティングからSI領域まで幅広くお客様と伴走できる基盤があるからこそできることで、広い視野を持ちながら支援できることも、きれいごとで終わらせない構造だと思います。


AIに置き換えることができないdentsu Japanならではのコンサルティング


田中:さまざまなステークホルダーを巻き込む必要があるプロジェクトでは複雑なコミュニケーションに割って入っていく必要があります。AIでは置き換えられないこのようなコミュニケーション能力はこれからのコンサルティングでますます重要性を増す部分ですね。


白戸:そうですね。「1対1」ではなく、「多対多」という座組の中で、どのようにビジネスをつくり、中心となってリードできるのかとなると、コミュニケーション能力は欠かせないと思います。


魚住:現代のコンサルティングは、もうクライアントが自社だけでやれるはずがないスケールの案件が多くなってきています。経済圏が大きくなり、多くのステークホルダーが関わる中で、AIには代替できない人間同士のコミュニケーションが求められるので、dentsu Japanの持っている能力を活かしてますます価値を発揮していきたいですね。


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●今回インタビューした方

白戸 大輔
電通総研 コンサルティング本部 戦略コンサルティング第2ユニット長

白戸 大輔

専門領域はDX戦略、ITグランドデザインやITロードマップ、RFP作成などのIT戦略、情報セキュリティー戦略。これまで自動車のオンライン販売プロジェクト企画・推進支援や、流通・小売・金融業においてアジアマーケットにおける顧客獲得・クロスセル、顧客情報の利活用・実現推進などの多業種のDX構想策定支援などを手掛ける。


魚住 高志
電通コンサルティング 執行役員 パートナー

魚住 高志

電通入社後、一貫してマーケティングのデジタル戦略策定支援に従事し、CRMサービス開発に関するプロジェクト経験が豊富。 また、ビッグデータとクラウドの可能性に早期から着目し、それらを活用したソリューション開発やコンサルティング、関連する記事執筆や講演も多数。 最近は、「マーケティングの経営ごと化」をイシューととらえ、企業ファイナンスとマーケティングの結節点となるテーマ開発に従事している。具体的には、顧客・従業員・社会と企業の「信頼」を非財務指標とした「企業価値」への貢献度を可視化。 更にはそれらをKPIとしたマーケティングPDCAの具体実行までを支援することで、経営者と実務者をつなぐ支援を行っている。


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