電通コンサルティングプリンシパル 加形拓也

【インタビュー】パーパス&デザインで、第三者だからこそ見つけられる領域を照らし、新しい未来に踏み込む勇気に寄り添う

今回は電通コンサルティングでプリンシパルを務め、パーパス&デザインの領域をリードする加形 拓也へのインタビューとして、新人アナリストがお話を伺いました。パーパス&デザインのソリューションに込められた想いをお届けします。

※インタビュー内容、所属、役職は取材当時のものです。(2022年6月取材)


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目次[非表示]

  1. 1.コミュニケーション戦略、商品開発を通じて得た「コンセプトの考え方」
  2. 2.時代の変化とともに、商品開発から未来を見据えたサービス開発へ
  3. 3.企業独自の領域はパーパスから見える。そこに踏み込むには勇気が必要

コミュニケーション戦略、商品開発を通じて得た「コンセプトの考え方」


―――まず、ご経歴をお伺いしたいのですが、今のパーパス&デザインという領域に至るまでにやってきたことを教えて頂けますか?


加形:2003年に電通に入社して、3年間人事を経験した後、マーケティングの部署に異動になりました。広告会社でマーケティング、というと広告宣伝のサポートというイメージですが、それだけではなく、クライアントの商品開発のお手伝いもさせていただけるチームでして、いま自分が取り組んでいる新規事業開発やサービスデザインにつながる仕事に取り組ませてもらいました。

​​​​​​​例えば、ある飲料メーカーさんとは「来年以降どんな紅茶を出すのか?」「今の世の中どんな紅茶が求められていて、紅茶でなにができるのか」ということをクライアントと一緒に探求していきます。さまざまな調査も行いますが、クライアント、電通チームのメンバーそれぞれが「どんな思いを紅茶にこめていきたいか」という個人的なアイディアから新しいコンセプトがうまれる面白さもあります。そのコンセプトをもとに、コンセプトを体現する茶葉や製法の選定、パッケージのデザイン、広告づくり、営業戦略づくり、とどんどん関わる方が増えていってひとつの商品をつくりあげていくダイナミクスを体感できます。

今思うと赤面したくなるような未熟さで、悩むことも多かったですが、とにかく素晴らしいクライアント、先輩後輩に囲まれた環境でした。「この商品がでることで、世の中がどうよくなる?」「そもそも“価値”ってなにを指している?」「きみ、いまさらっと“新しい”という言葉を使ったけど、どういう意味合いで“新しい”と思ってるの?」などなど、厳しくも前向きな議論が交わされる場でもがく中で、自分の考えの浅さに気づく悔しさ、常に世の中の変化を注意深くみていく態度など、仕事をする上で大切なことを学びました。


時代の変化とともに、商品開発から未来を見据えたサービス開発へ

サービスデザイン関連のワークショップの様子

(サービスデザイン関連のワークショップの様子)

加形:その後、2016年に「電通デジタル」が設立され、わたしも「サービスデザイン」のチームで活動していくことになりました。あらゆるものがインターネットに接続され、複数のプロダクトがアプリでつながっていく「サービス」になっていく時代に即した配置だったのかと思います。ナイキの靴とリストバンドがつながり、健康管理や仲間同士でモチベーションづくりできる「Fuel Band」などは当時よく事例であげられるサービスでしたね。

電通デジタルでサービスデザインを担当する事業部の部長を経て、2022年に電通コンサルティングに入社してもサービスデザインの仕事は続いています。たとえば、新しいかたちの地域商社を作りたいと思っている銀行さんに対して、その地域商社が何をすべきか、地域の住民に提供するサービスはどうなるか、ということを、より大きな「事業」という視点でメンバー、クライアントと一緒に考えている。これもある意味サービスデザインの延長ですね。

サービスを考えるにあたっては「いま」のことだけ見ていてもサービスができた頃には時代遅れになってしまうから、10年後にどうなっていたいかからバックキャストして考えることを心がけています。2030年にはクライアントはどんな会社になっていて、ユーザーにどんなサービスを出していくか、という視点で考え始めると、チームメンバーから面白いアイディアがどんどんでてきます。

仕事の内容は、自動車会社がてがける「まちづくり」の構想を一緒に考えたり、保険会社が2050年に成功しているべき事業の内容を検討したり、とどんどん複雑化しています。ただ、その分、企業のみなさまがひそかにもっている野心を拾い上げたり、「世の中がこんな風によくなったらいいよね」という前向きな議論ができるので毎日がとても楽しいです。


【参考】「ニチレイはなぜ、新規事業のアイデア発想に「未来曼荼羅」を活用したのか?」Knowledge Charge


企業独自の領域はパーパスから見える。そこに踏み込むには勇気が必要

電通コンサルティングプリンシパル 加形拓也


―――商品開発のコンセプト設計から、サービスデザイン、まちづくりに至るまでのご経歴が繋がっているのがよくわかりました。電通コンサルティングでは「パーパス&デザイン」のリードをされていますが、どうとらえていますか?


加形:商品設計やサービスデザインは、社会や生活者が求めているものを見つけていって、課題を解決するものを世の中に出していくということ。それは今の仕事でも変わりません。

社会が成熟化していくと、業界ごとにだいたい「次はこれだよね」という商品やマーケティングの「定番」が見えてきますが、その分差別化が難しくなるし、たとえば、自動車メーカーが「まちづくり」に踏み出すように、新たな領域にチャレンジすることが必要になってきます。その時に一番大事なのは、「うちの会社ってそもそもどんな会社なんだったっけ?」「社会になんのために存在してるんだっけ?」というパーパスです。​​​​​​​

私がずっと取り組んできたサービスデザインとパーパスを表裏一体で考えるべき時代がきているな、と感じていたので、新しい電通コンサルティングが「パーパス&デザイン」というテーマを掲げることにはとてもわくわくしています。業界の人がみんな考えつく課題解決は、差別化にならない。「他社は絶対にやらないけどうちの会社はなぜかやる、儲かるかどうかはわからない、でもうまくいったらそのとき、自分たちは競合他社とぜんぜん違う地平がみるよね」というポイントが、パーパスを掘り下げていくと見えてくる。

逆にそれが見えてこない“パーパス”は掘り下げが足りないともいえます。議論がはじまったときには「そこをやるんですか!?」という領域でも、新事業、サービスとパーパスの掘り下げをいったりきたりする中で「これがいいんだ」という確信がうまれ、クライアントのみなさんに新しい領域に踏み込む勇気が生まれてくる、という素晴らしい瞬間をたくさんご一緒してきました。


―――企業がもともと提供していた価値と、全く異なる価値をどうやって見つけ出そうとしているんですか?以前かかれた「ウェブ電通報」の記事ではバーカウンターのたとえをだされてましたよね?


加形:企業の資産を掘っていくだけだと見つからないことはたくさんあって、クライアントが縦割りの組織を乗り越えて、未来の社会変化を一緒に見ていくと、実はクライアント自身が培ってきた資産に、未来の社会を変えていくような宝物があることに気付く。

これはデザイン思考的な進め方だったりして、とても有効な手法です。詳しくはぜひ記事をご覧ください。


【参考】「『パーパス』とは『ウチの会社らしさ』の究極形である」電通報


―――ありがとうございました。後編では、様々な取り組みをしている加形の「パラレルキャリア」についてお話を伺います。


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●今回インタビューした方

加形 拓也
電通コンサルティング プリンシパル

電通コンサルティングプリンシパル 加形拓也

電通マーケティング部門~電通デジタル~電通コンサルティングで保険会社の2050年構想/自動車会社のスマートシティ構想/食品企業の新事業など、企業の事業デザインをサポート。都市工学をバックグラウンドとしたコンサルティングと縦割りを打破していくファシリテーションが得意。
電通相撲部主将。右四つ。得意技は下手投げ。


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