
電通コンサルティングが目指す『ユニークで確からしい成長』の実現:これからの時代に、右脳×左脳×異能が生み出す新たな価値とは【シニアパートナー対談 前編】
電通、電通デジタルで多くの新規事業やサービス開発に携わり2022年より電通コンサルティングをリードしている代表取締役 社長執行役員/シニアパートナーの八木 克全と、電通グループで推進するBX連携を強化していく任を担うべく、2025年6月に電通コンサルティングに参画したBX推進最高責任者/シニアパートナー 宮下 剛の対談企画【前編】は、電通コンサルティングが目指す姿と、これからの時代に提供していくべき新たな価値について語ります。
(ファシリテーター:電通コンサルティング 執行役員/パートナー 田中 寛)
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アイデア創出力と、確からしい意思決定を可能にする機能の融合
田中:まず、八木さんから電通コンサルティングの、会社としての考え方をお話しいただけますか。
八木:2022年から我々のコンセプトを、「ユニークで確からしい」戦略で持続的な成長を実現する、グロース領域に特化したファームとおいています。
よくクライアント企業の意思決定者の方々から、「広告会社に頼むと面白いアイデアは出てくるが、それだけでは経営の意思決定はできない」というご意見をいただいたり、またコンサルティングファームに対しては「多様なシナリオが提示され、正しく意思決定できるところまでは支援してくれるが、それだけでは物足りない」という声を伺います。
また、近年は、社会、経済の変化や、技術革新のインパクトなどにより、その時点での確かな戦略を立案しつつも、環境変化に合わせて「ユニークさ」と「確からしさ」の観点でUpdateし続けていくこと、そして、実行=グロースまでやり切ることの重要性が高まっていると感じています。
であるならば、電通グループのクリエイティビティを注入したユニークさを創出する機能と、コンサルティングファームの確からしい意思決定を可能にする機能を融合させた会社には存在意義があり、我々らしく価値を提供できるのではないかと考えた次第です。
AIに置き換えられない力「右脳×左脳×異能」で、クライアント企業の意思決定の背中を押す
八木:電通コンサルティングは「右脳・左脳・異能」の掛け合わせを特徴として掲げていますが、まず「右脳」とは、見えないものを見える化するクリエイティビティを指します。「左脳」は、構想を事業に必要十分に組み込むロジカルな力、そして「異能」とは、社内外の様々な能力や人材をうまく組み合わせ、チーミングしていく力です。
AIがコンサルティング領域に大きな影響を与えると言われる中でも、この3つの力は生き残ると考えています。アイデアを量産するだけであればAIでもできますが、「見えない領域」を発見し、それを「見える化」することは、AIは得意ではない。また、構想を事業に必要十分に組み込むという点では、既存の要素と将来的に必要となる要素、時間軸も考慮した「必要十分性」が求められ、これも過去のデータに基づいて判断するAIには難しい領域です。さらに、多様な人材をチーミングし、事業を立ち上げ、推進していくこともAIにはできません。
この「右脳・左脳・異能」を特徴とし、「ユニークで確からしい」ことにこだわり続けることで、企業や人が「実行できそうだがつまらない」あるいは「実行するには不安がある」といった状況において、我々が意思決定者の背中を押すことができるのではないかと考えています。
田中:ありがとうございます。宮下さん、これまでのコンサルティングのご経験と今のお話を踏まえて、どのような経験が活かせそうか、率直なお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
宮下:今、八木さんがお話しされた内容は、私がこれまで考えてきたこと、実践してきたこと、そしてこれから取り組んでいきたいことと重なる気がしており、そうした点でこれまでの経験が活かせればと考えています。
「正解」が容易に手に入る時代における、コンサルタントの役割
宮下:これからの時代、プロジェクトの進め方やコンサルタントに期待頂く役割も変わるように感じています。AIや技術の進化が加速しプロジェクト期間中にも変化が起きるようになると、プロジェクトも当初計画に沿ったウォーターフォール型の仕組みの導入をゴールとした進め方から、クライアントに伴走し、常に変化に対応し続ける必要性が高まるように思われます。
また、AIの活用により、従来に比べてある種の「正解」は容易に手に入るようになるため、実現するためのスキームをつくり、実行し、進化させていく事の重要性が高まると考えています。
そうした中では、コンサルタントは、全てをAIに置き換えるのではなく、その企業や社会に応じたブレンドの絶妙なバランスを見極める力も求められていると感じており、八木さんのお話された「右脳・左脳・異能」の掛け合わせに共感しています。
八木:今の宮下さんのお話、「AI時代は正解がある」というのは非常に興味深く、私もその通りだと思うのですが、 その上で、そこにアイデアを持った人が一人加わることで異なる正解が生まれたり、一度実行することでその結果が過去のデータとなって、また新たな正解が導き出されたりしますよね。
ミクロな断面で見たときに無数に存在する正解を、マクロな1つの取り組みとしてどのように捉え、関わる人間の総和を超える価値創造活動として構築するか。これは非常に面白い取り組みであり、AIと人材を組み合わせた支援メニューとも言えます。そもそも、プロジェクトに人を集める理由もそこにあるのではないかと感じました。
田中:「想像を超える価値創造」、つまり1+1+1が3以上になる、しかもそれが絶えず変化する中で対応し続けるというお話ですね。そこには様々な工夫があるのだと思います。単に異なるバックグラウンドを持つ人が集まっただけでは、それが自然に生まれるとは限りません。何か、意思の持たせ方、目的設定の仕方、チーミングの方法、プロセスの組み方などで、アウトプットを向上させる工夫はあるのでしょうか。
想像を超える価値創造を実現するための、「ルール」と「自由度」
八木:宮下さんにもお伺いしたいところですが、私たちが通常行うのは、「ルール」と「自由度」をいかに組み合わせるかということです。局所的には個性を持つチームが常に良いアイデアを出す、広義には社会で生活する人々を動かそうとする際に、ルールと自由度の両方がだと感じることが多いです。
例えば、アイデアを出すということであれば、「人を否定しない」「常にアイデアを上乗せしていく」がルールであり、「100個のアイデアを考える」という中で各自の自由度が担保されます。個性を持ったメンバーが同じことをする事で、チームで良いアイデアが生まれやすくなります。
これが社会になり、一人ひとりがある商品を購入する事で市場の何パーセントのシェアをとるということであれば、「社会を抽象度の高い概念で捉えず、一人ひとりの人間の気持ちや行動から考える」というのがルールであり、「気持ちや行動をもった人間の集合体で市場を捉える」という中で各自の自由度が担保されます。そして、一人ひとりの人間と集合体である市場を行き来しながら考える事で、人が動きすぎる、または、動かなさすぎる、等、想定しなかったことが起こった時にその対応が容易となります。
典型的なコンサルティングプロセスは、標準的なフレームや活用ルールを定めている事が多いため、総力戦で短期間に成果を出す強みがあると思います。電通コンサルティングのコンサルティングプロセスや背景にあるカルチャーは、クリエイティビティを大切にしたり、社会や組織という集合体の中にいる一人ひとりの気持ちや行動の理解を大切にしたりと思考の自由度が高く、典型的なコンサルティングプロセスと異なる側面があると感じています。宮下さんのような、逆に、コンサルティング業界で、クリエイティビティや一人ひとりの気持ちや行動の理解を大切にされてきた方が電通コンサルティングに参画されたことで、我々の提供価値により一層磨きがかかるのではないかと期待しています。
田中:宮下さんは、実際に組織や会社を創り上げてこられたご経験の中で、ルールや自由度についてどのようにお考えになり、実践されてきたのでしょうか。どのようにこれらをミックスし、組織の力を最大化されてきたのか、組織運営で大切にされてきたことをぜひ教えてください。
宮下:仕事は「団体戦」であり、それぞれが役割を果たし、全員で目標を達成するものだと考えています。野球に例えると打率3割でホームラン20本の選手が1番から9番まで並んでいても、必ずしも勝てるとは限らないと思います。代打、守備のスペシャリスト、肩の調子が十分ではなくローテーションどおりに投げることは難しくても短いイニングであれば素晴らしいピッチングをする投手、そのような人材をどう活かすかがマネジメントの仕事だと考えており、「多様性を力にする」ことを意識してきました。
組織運営のモットー「本音の会話、本気の遊び、本物の仕事」
宮下:そのために心掛けてきた事は2つあります。1つ目は、組織作りのモットーとして「本音の会話、本気の遊び、本物の仕事」を掲げていました。「本物の仕事」を成し遂げる事がミッションですが、その過程では遊び心も大切にしたいと考えており、その「遊び」から斬新なアイデアがうまれ、全く異なるバックグラウンドを持つ人々の一体感を育む機会にもなると考えています。
例えば、組織の全体会議/懇親会などにおいて、必須参加というような位置づけにしなくても、企画や内容が面白ければ自然と多くの方が参加すると考え、ユニークな企画を、時間をかけて議論し、大切にしてきました。準備の時間もかかりますが、企画の準備、実現や、多くのメンバーが参加し、時間通りに集まり、欠席者を把握しフォローする、そういった事はクライアントワークにおけるプロジェクトマネジメントに通じる要素があると思っています。
また「本気の遊び」を実現できる場を設けることで、プロジェクトワークでは生まれにくい、ざっくばらんな会話もできるようになり、「本音の会話」がかわされる。評価のフィードバックの場面などでも、本当のところのモチベーションや、考えていることの前提がずれると、目標設定が形式的になったり、こなすだけの意味のない会話の時間になってしまいかねないため、率直な会話ができればと思っていました。一人ひとりとそのような関係を築いていくと、100人いれば100人それぞれの悩みがあることに気づかされます。
話したくないことを無理に聞き出す意図は全くないことは前提としたうえで、差し支えない範囲で話してもらう内容を聞き、一緒に悩む、そのような「本音の会話」と「本気の遊び」を通じて、共に「本物の仕事」ができればと考えていました。
八木:宮下さんのようなアプローチは、コンサルティング業界では一般的なのでしょうか。デザインや広告業界では比較的よく見られるスタイルで、親密な関係性を築くことが多いのですが。
宮下:自分では分からないですが、少し変わった人だと思われていたかもしれません(笑)
「好きなことをやる」で終わらせず、そこで得たものを仕事や社会に還元する
宮下:2つ目は、「価値創造の循環モデル」の意識です。私たちの本業はクライアントの課題解決ですが、コンサルティング、デジタル等の知見を活かすことで社会や様々な事に貢献できることがあると考えています。
10年ほど前、私自身はCustomer Relationship Management(CRM)組織を担当し、顧客満足度向上などを謳っているのに、花火大会、コンサートといったイベントを盛り上げるような相談を頂くことがないのはなぜだろうと感じる機会がありました。例えば、専門性が不足しているなど、様々な理由があると思いますが、私たち自身がコンサルティングの仕事の定義を限定的に捉え、自ら可能性を狭めていることにも原因があるのではないか、実はもっと役に立てる部分はあるのではと考えました。
そこで、コンサルティングの知見を活かして、スポーツ、地方創生、エンターテイメント、SDGs、NPO支援など、様々な分野に活動を広げていくなかで、活動に関心を持ち、共感する仲間も増え、多様なバックグラウンドを持つ人々が、共通の関心事で繋がり、活動していく中で一体感が生まれてきました。
ただし、これらの活動には短期的な収益には繋がらないものもあり、結果的に持続的な活動にしていくことも難しくなってしまうため、コンサルティングの知見を活かした様々な活動で培った経験や学びを、再びビジネスに還元することを意識していました。「好きなことをする」ということをゴールとした活動ではなく、例えば、イベントの満足度向上に取り組み、その際に用いた最新の手法やデータ活用などの「新たな価値」をクライアントの変革に繋げる活動にしていくイメージです。
ルールと自由度という観点では、このモットーと、価値創造の循環を意識していました。
異能のエネルギーは、できることより、やりたいことをやっているときに発揮される
宮下:右脳×左脳×異能について言うと、これまでのコンサルティング×テクノロジー×クリエイティブというビジネスの推進や、異業種の方々にチームに参画いただいた際にも異能のエネルギーを感じる機会も多くありました。コンサルタントとして経験できないようなバックグラウンドやカルチャーを持つ方々から教えて頂いた事はたくさんあります。
田中:異能のエネルギーは電通グループにも感じますよね。電通コンサルティングとして、異能をどう活用していくべきとか、こうしたらこうエネルギーが出てくるみたいなことってありますか?
八木:人はできることをやるときより、やりたいことをやっているときの方により力が出ると信じているんですが、電通グループでは「やりたい」と言う機会が多いので、「こういうことがやりたい」と発意することに慣れていきます。それに応じて良い仕事に出会ったり、自身の異能キャリアが作り上げられているんですよね。異能と呼ばれたり、異能な力を引き出すには、電通コンサルティングにおいても「好きなことやりたい」と公言するカルチャーを作ることが必要だと思います。
コンサルティングとクリエイティブがフラットに融合される、電通という環境
宮下:ちなみに私、新卒の就職活動では第一志望が電通でした。当時の自分に32年後の電通コンサルティング参画を伝えたいです。(笑)
八木:そうだったのですね。あるべきところにいらっしゃったということでしょうか。
宮下:八木さんやマネジメントの方々とお話しさせていただく中で、電通コンサルティングのビジョンに共感したというのが今回の参画の理由として一番大きいですが、時を経て電通グループのビジネスに携わることへの思いもありました。
また、右脳×左脳×異能はこれまでも大切にできればと考えていたのですが、コンサルティング会社ではコンサルティングを基軸としてクリエイティブなどをエンハンスしていくアプローチに対して、電通グループの場合は、クリエイティブ、コンサルティング、システム構築などが、それぞれ主体的にビジネスを創り上げてきた歴史があり、それらがフラットな関係で融合しており、そこが大きく異なると感じています。私にとってこの新しい環境はチャレンジでもあり、向き合っていきたいと思った事のひとつです。
●プロフィール
電通コンサルティング
代表取締役 社長執行役員 / シニアパートナー
八木 克全
京都大学、大学院で建築を専攻(工学研究科修士課程修了)。電通入社後、営業局、マーケティングコンサルティング局にて、デジタルサービスの開発/推進領域、大手企業のデジタル事業の開発/事業グロースを経験。 |
電通コンサルティング
BX連携最高責任者 / シニアパートナー
宮下 剛
早稲田大学社会科学部卒。アクセンチュア、IBM、デロイト トーマツ コンサルティングを経て現職。30年以上のコンサルティング経験を有する。 |