地域DXとは?注目される理由や推進のポイント、事例などを解説
近年、都市部一極集中の影響で地域格差が顕著となっており、地域は多くの課題を抱えている状況です。これらの課題を解決するため、将来にわたって生活者の暮らしを向上させ、経済の活性化につなげる地域DXが注目されています。
今回は、地域DXの概要や推進する際のポイント、株式会社電通コンサルティングの地域DX事例等について解説します。
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地域DXとは
◆1. DXとは
DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称で、デジタル技術による生活やビジネスの変革を意味します。デジタル技術の活用によって業務を効率化するだけではなく、ビジネスモデルそのものを変革し、新たな価値を提供していくことが特徴です。組織や企業文化の改善は、競争力をさらに高めることにもつながります。
◆2. 地域DXとは
地域DXとは、地域単位で行うDXのことで、地域課題をデジタル技術で解決し、住民の暮らしをより豊かにして地域経済を活性化させる取り組みを指します。具体的には、行政サービスのオンライン化、マイナンバー連携による各種手続きの電子化、スマート農業、観光DX、サテライトオフィス誘致等が挙げられます。
総務省では、『自治体DX』と『地域社会DX』の両方の側面から地域DXを推進するとしています。自治体DXとは、行政手続きのデジタル化や行政内部のデータ連係などを通じて住民の利便性向上と業務効率化を図る取り組み、地域社会DXは、デジタル技術を活用し地域課題の解決を図る取り組みを指します。
【参考】「地域におけるデジタル・トランスフォーメーション」総務省
なぜ地域DXが注目されているのか
地域DXが注目される背景として、首都圏一極集中によって地域の高齢化や過疎化が進み、下記のような地域格差が多く生まれていることが挙げられます。
・人口減少 ・産業の空洞化
・所得格差 ・医療格差
・情報格差 ・経済格差
・教育格差 ・物流インフラの整備状況
・交通・物流インフラの整備状況
2021年政府は、こうした課題をデジタル技術によって解決し、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を目指す『デジタル田園都市国家構想』を打ち出しました。同時に、地域生活者を起点とし、さまざまなステークホルダーを巻き込んで地域活性化を図る『地域共創』の取り組みも注目されています。地域共創は、政府からのトップダウンアプローチではなく、地域の生活者を起点としたボトムアップアプローチであり、地域が抱える課題を解決して理想の未来像を実現することを目的としています。
【参考】「デジタル田園都市国家構想」内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局
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地域DXの担い手は誰か
地域DXの担い手として重要な役割を果たすのは、地域に根差し、長年地元の生活者に寄り添ってきた民間企業です。地域金融機関やメディア企業等、地域経済の中心的な役割を担ってきた地域リーダー企業を中心に民間企業同士が連携することで、地域の特性や課題を踏まえたデジタルサービスの提供が実現します。そのため、地域の特性を深く理解している民間企業こそ、地域DX推進に取り組む意義があるといえるでしょう。
地域DXを推進するメリット
◆1. 生活者の利便性向上と若年層の増加(対生活者にとってのメリット)
デジタル実装による生活者の利便性向上は、地域DXのメリットであり、目的の1つでもあります。地域生活の利便性が向上することで、デジタルネイティブな若年層の地元離れを防ぎ、地域生活での楽しみを見出してくれる可能性も高まります。若年層の増加は、地域の景気向上にもつながるでしょう。
また、DX人材の育成という点でも、地域における需要の高まりによって若年層を地域に呼び込むことが期待できます。若年層の囲い込みを課題としている地域であれば、特にメリットが大きいと考えられます。
◆2. 地域顧客接点の構築による地域事業者のマーケティングの拡大(対地域事業者のメリット)
地域DXにより地域事業者がデジタルマーケティングを実装することで、地域事業者のマーケティングのさらなる拡大が期待できます。たとえば、生活者IDを起点とした地域CRM基盤を構築し、生活者の情報を管理することで、より効率的に地域生活者のニーズを捉えられるようになり、課題解決につながるサービスの提供がしやすくなります。このような地域密着型のデジタルマーケティングは、地域事業者の収益性向上をもたらします。
◆3. 経済の活性化(対行政および地域へのメリット)
地域DXによって地域の特性や課題に沿ったデジタルサービスを提供できるようになると、地域生活の質が向上するとともに、情報や消費の地産地消化を図れます。また、さまざまな施策を内製化できるため、地域外に流出していた外注費を地域内で循環させることが可能になります。地域生活者・地域事業者・行政と連携し、地域循環型のモデルを確立すると、地域経済の活性化が期待できます。
地域DXを推進する際のポイント
◆1. 目的を明確にする
地域DXを推進する場合、まずは目的を明確にしましょう。地域によって、課題やニーズはそれぞれ異なります。デジタル化およびシステム導入にあたって、地域の特性や課題を把握し、デジタル技術をどのように活用することで解決できるのか具体的に計画します。
◆2. サービス提供側の関係者間で共有する
地域DXは、1社だけでは実現不可能です。明確化した目的は、共創パートナーをはじめとする関係者の間で共有しましょう。そして、取り組みに対する共通認識を持ち、意識を統一させ、協力しやすい体制づくりを行うことが大切です。
◆3. ステークホルダーを巻き込む
これまで地域経済の中心的な役割を担ってきた民間企業も、今後は人口減少や高齢化の影響を大きく受けることが予測されます。そのため、自治体、教育機関、地域住民といったステークホルダーを巻き込んで地域DXに取り組む必要があります。各社・各機関と連携し、地域の特性を踏まえた価値の循環モデルを構築することが重要です。
◆4. DX人材を確保する
システムを使いこなすには、DXやデジタル技術に詳しい人材が必要です。デジタル技術にはさまざまな種類があり、DX人材にもAIに精通している人やクラウドに精通している人など、得意な分野は人によって異なります。そのため、ただ闇雲に人材を募集し受け入れるのではなく、目的に合った人材を確保することが大切です。もし社内で確保するのが難しい場合は、アウトソースすることも検討しましょう。
◆5. クイックウィンをとりにいく、象徴的な実績を作る
地域DXは、まず小さなデジタル実装からスタートし、成功を積み重ねて実績をつくっていくことが大切です。そのため、クイックウィン(短期間で達成できる成果)を得られるような小さな改革からスタートしましょう。
◆6. KGI・KPIを設定しておく
KGIとはKey Goal Indicator(重要業績評価指数)の略で、「いつまでにどのような状態を目指すのか」という具体的な最終目標を指します。そして、このKGIの達成のために細分化し設定する施策をKey Performance Indicator(重要業績指標)といいます。効果的なKPIの設定が、KGIを達成するための肝となります。これらは数値化目標であり、設定しておくと進捗状況を把握しやすくなります。
◆7. PDCAの仕組みを作る
地域DXを効果的に進めるには、PDCA(計画・実行・評価・改善)の仕組みをつくり、定期的にプロジェクトの見直しを図りましょう。特にデジタル技術は進歩が速いため、PDCAサイクルを高速化することが重要です。各段階での成果を評価しながら、課題を洗い出し、改善を図ることで、迅速な意思決定を可能にします。
電通コンサルティングの地域DX事例
株式会社電通コンサルティングでは、地域共創の一環として地域DXの推進を一気通貫で支援しています。地域DXを通して地域課題を解決し、生活者・企業・自治体に新しい体験価値を提供します。
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まとめ
地域DXとは、デジタル技術の実装で地域課題を解決し、地域生活者の暮らしや地域経済を向上させる取り組みです。地域DXをはじめとする地域共創プロジェクトは、日本の将来にとって非常に重要であり、地域の持つ力をデジタル技術で引き出すことで、持続可能な社会発展の実現へとつながっていきます。地域のさまざまなステークホルダーを巻き込み、官民連携で地域DXを推進し、地域の暮らしをより良いものにしていきましょう。
電通コンサルティングの地域DXと『地域共創プラットフォーム』
株式会社電通コンサルティングでは、地域金融機関や地方メディアを始めとした有力企業に向けて、地域共創プラットフォームの事業構想策定や事業立ち上げを支援する「グロース特化型のコンサルティングファーム」です。
・地域のリーダー企業を中心に民間企業を巻き込み運営体制を構築します。地域特性や地域課題を踏まえて、ありたき姿を言語化し、地域生活者に刺さる“キラーサービス”を打ち出します。さらにサービスモデル・ビジネスモデル・収支モデルを検討し、事業構想書を具体化していきます。
・受容性・実現性検証を基に事業運営スキームや投資・収支計画、マーケティングプランを検討していきます。また、投資意思決定に資する事業計画書を具体化します。
・事業運営組織の構築から、UXデザインやサービス設計、システム開発・テストを経てマーケティング活動開始まで、事業立ち上げに関する全ての過程において伴走支援します。
電通グループ各社との連携により、探索・構想・計画・実行まで一気通貫で切れ目なく支援できることが当社の強みです。ぜひご検討ください。
サービス開発者の紹介
杉本 将隆
電通コンサルティング 専務執行役員 シニアパートナー
シリアルイントレプレナー&事業創造コンサルタント&アントレプレナーシップ教育家の3つの顔を持つ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、大手鉄道会社に就職。複数の新規事業立ち上げを経験。九州大学ビジネススクール在学中に、デロイトトーマツコンサルティング合同会社に移り、B2C向け新規事業・CRM戦略チームを6年間リード。PwCコンサルティング合同会社では、地方創生チームと地区事務所を立ち上げ統括責任者。2019年9月より電通グループのコンサルティング事業バリューアップのため参画。九州大学QREC客員教授(ニュービジネスクリエーション)、亜細亜大学ビジネススクール講師。中小企業診断士、1級FP技能士、経営学修士。 |